経営管理ビザとは
「経営管理ビザ」とは、外国人が日本で起業したり、企業の管理者として就労する際に必要な在留資格です。
これは平成26年の法改正を経て、かつての「投資・経営」の在留資格から変わりました。以前は、外国人が日本へ投資することが主な条件でしたが、現在は外国資本の企業の経営者や管理者として就労することも含まれるようになりました。
具体的に、経営管理ビザが必要となる活動としては、
- 日本において事業の経営を開始してその経営を行い又はその事業の管理に従事する活動
- 日本において既に営まれている事業に参画してその経営を行い又はその事業の管理に従事する活動
- 法人を含む日本において事業の経営を行っている者に代わってその経営を行い又はその事業の管理に従事する活動
この資格を取得できるのは、実際にビジネスの経営や管理に関与する役職の人々です。例えば、社長や取締役、部長、工場長などがこれに当たります。
経営管理ビザの申請には、運営可能な会社の設立が前提となります。業種には特定の制限はないものの、その事業が安定して続けられることの証明が不可欠です。
ビジネスを始める上で、特に飲食店などを計画している方は、多くの前準備と投資が求められます。しかし、もしビザの申請が認められなかった場合、その資産や事業は手放さざるを得なくなります。このようなリスクを考慮して、ビザの取得は非常に慎重に進めるべきなのです。
経営管理ビザの取得は複雑であり、失敗は大きな損失をもたらす可能性があります。そのため、事前に経験豊かな専門家に相談することをお勧めします。
経営管理ビザの申請要件
外国人が日本でビジネスを始め、経営管理ビザを希望する際、以下の全ての条件を満たす必要があります。
- イ その経営又は管理に従事する者以外に日本に居住する二人以上の常勤職員(法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
- ロ 資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。
- ハ イ又は口に準ずる規模であると認められるものであること。 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は,事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
事業所を確保していること
事業所については、総務省が次のように規定しています。
1.経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること。
2.財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的に行われていること。
これを基に、一時的なレンタルスペースや移動が簡単な移動販売車などはこの基準を満たさないとされます。
もし事業所が賃貸物件である場合、その賃貸契約は事業の目的のもので、法人名義で明確にされている必要があります。
新興企業の場合、初期段階では小規模や少数のスタッフでの運営が可能な場合が多く、自宅をオフィスとして使用することも考えられます。しかし、その場合、住居以外の目的での使用が許可されており、適切な設備や部屋を有していること、公共料金の取り決めが明確であること、そして社名の看板などが掲示されていることが求められます。
認められる事業所物件 | 賃貸事務所(法人契約) レンタルオフィス(独立した個室がある場合) インキュベーションオフィス |
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認められない事業所 | 自宅マンション(広い物件でも不可) ※戸建で個人医院のような態様は認められる可能性あり マンスリーマンション バーチャルオフィス 共同事務所・他の事務所の間借り 移動式の車両 |
一定以上の事業規模
上記の「経営管理ビザの申請要件」の項目ハは、イやロに直接該当しない場合でも、イまたはロと同等の大きさを持っているとき、事業の大きさの基準を満たすとされます。「同等の大きさ」とは、事業の規模が実際にイまたはロと同様に評価されるような大きさであることを意味します。
イと同等の規模とは、たとえば、常勤の従業員が1人だけである場合、もう1人の従業員の給与相当額として約250万円の資金が必要とされるような事業の規模を指します。
ロと同等の規模とは、例えば、外国人が個人として事業を始める場合、500万円以上の投資があるような事業の規模を指します。この500万円とは、事業の運営に必要な合計金額で、以下のような事業目的に使用される投資を指します。
また、既存の事業であれば、500万円以上の投資が継続して行われていることが求められ、これが確認される場合、事業の規模基準が満たされていると見なされます。
・事業所の確保
その事業を営むための事業所として使用する施設の確保に係る経費
・雇用する職員の給与等
役員報酬及び常勤・非常勤を問わず,当該事業所において雇用する職員に支払われる報酬に係る経費
・その他 事業所に備え付けるための事務機器購入経費及び事業所維持に係る経費
一般的には,会社の事業資金であっても会社の借金は直ちには投資された金額とはなり得ないがその外国人がその借入金について個人保証をしている等の特別の事情があれば本人の投資額と見る余地があります。
事業の継続性・安定性
事業の継続性・安定性は、事業計画書で入国管理局へ説明することになります。事業の適正性、経営・管理に実質的に従事できる事も併せて説明します。
なお、当局に事業計画を説明するための面談はありません。したがって、日本語で書かれた事業計画書や理由書の書面だけで、審査官の理解を得る必要があります。日本語が得意な場合でも、事業計画書の作成に慣れている人は少ないため、審査で必要な事項をしっかりと説明できないと審査に不利となります。
また、経営管理ビザの更新のときにも、損益と財務の状況が審査され、赤字決算の場合には、新たに事業計画書を作成し、事業の継続性・安定性を説明します。
2名以上の外国人が共同で事業を経営する場合
複数の外国人が共同で事業を立ち上げ、他に従業員がおらず、全員が役員として活動する場合、それぞれの外国人の具体的な活動内容を基に、適切な在留資格と入国基準の該当性が審査されます。単に役員であるという事実だけで「経営・管理」の在留資格が認められるわけではありません。
さらに、複数の外国人が事業の経営や管理に関与する際、事業の大きさ、業務の量、収益などを考慮して、複数の外国人が経営や管理に従事する合理的な根拠が必要とされます。具体的には、各外国人が担当する業務内容や、役員としての報酬等を考慮し、これらの外国人が実際に経営や管理の業務を行っているかを評価します。
これらの点を総括すると、すべての外国人が「経営・管理」の在留資格を認められるためには、以下の条件が必要です。
1.事業の規模や業務量の状況を勘案して、それぞれの外国人が事業の経営又は管理を行うことについて合理的な理由が認められること
2.事業の経営又は管理に係る業務について、それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること
3.それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として報酬額の支払いを受けること
経営管理ビザの在留期間について
経営管理ビザの在留期間には、3か月・4か月・6か月・1年・3年・5年の種類があります。基本的には申請した内容に基づいて在留期間は定められますが、1年に設定されることが一般的です。
また、経営管理ビザの更新期間も通常1年ごとが基本となります。しかし、事業の状況や経営者の在留状況、企業の規模などにより2年や3年の更新が可能な場合もあります。
それぞれどのような場合なのか解説していきます。
更新時に3年の在留期間を取得できる可能性
初回の経営管理ビザの在留期間が1年以下だったとしても、以下の条件を満たすことで、更新時には3年の在留期間を取得できる可能性が高まります。
- 住所や勤務先の変更があった際の適切な届け出が完了していること。
- 将来的に1年以上日本に滞在する意向があること。
- 子供が義務教育機関(インターナショナルスクールを含む)に在籍していること。
- 上場企業や公的機関など、安定した勤務環境にあること。
- 事業の運営が順調であること。
3年以上の在留期間で永住権申請が許可される
経営管理ビザの在留期間が3年以上の場合、永住権を申請することができます。
永住権を取得すれば、定期的な在留資格の更新が不要となります。日本での長期的な滞在や事業活動を計画している場合、永住権の取得を考慮すると良いでしょう。
5年の在留期間を取得できる可能性
経営管理ビザの更新の際に5年の在留期間を取得するための要件は以下の通りです。
- 住所や勤務先の変更時の適切な届け出が完了していること。
- 将来的に3年以上日本に滞在する意向があること。
- 子供が義務教育機関(インターナショナルスクールを含む)に在籍していること。
- 上場企業や公的機関など、安定した勤務環境にあること、または経営管理ビザの3年の在留期間を経て、さらに5年以上該当する活動を続けていること。
- 事業の運営が順調であること。 既に永住権を取得している場合、経営管理ビザがなくても経営活動が可能ですし、日本での活動に対する制約も受けません。
経営管理ビザの審査期間
経営管理ビザの申請結果を受け取るまでの期間は、通常、申請日からおおよそ3ヶ月程度です。しかし、追加の書類提出や詳細な説明が入国管理局から要求される場合や、局の多忙な時期には、この期間がさらに延びることがあります。
経営管理ビザの取得プロセスは、以下のステップで進行します。
(証明書の準備や事業計画書の作成)
この流れを考慮すると、計画の初期段階から会社設立まで約1ヶ月、ビザ申請資料の整備にもう1ヶ月、そして申請から結果の通知までが3ヶ月と考えると、全体で4〜5ヶ月程度が目安となります。
ただし、許可・認可の取得状況や審査の進行具合により、さらに時間が必要となることも考えられます。
このため、事業を開始するまでの日程や必要な資金については、余裕をもって予め計画しておくことが推奨されます。